マンジャロのSNS転売は犯罪です。書類送検事例と、ダイエット目的で知るべき本当のリスク
2026年6月、ある報道がニュースのトップを賑わせました。糖尿病治療薬「マンジャロ」を、SNSを通じて転売する目的で無許可に保管していたとして、複数名が書類送検されたという事件です。
ダイエット目的でのGLP-1受容体作動薬の利用が広がるなか、SNSを介した個人間の売買は、もはや珍しいものではなくなりつつあります。しかし、その多くは明確な犯罪行為であり、買う側にとっても看過できない健康リスクをはらんでいます。
この記事は、特定の誰かを批判するためのものではありません。「知らなかった」がために罪に問われたり、健康を損なったりする方が一人でも減るように——正確な事実を、医療機関の立場からお伝えするためのものです。
2026年6月、何が起きたのか
報道によれば、大阪府警は2026年6月2日、SNSで転売するために糖尿病治療薬「マンジャロ」を許可なく保管するなどしたとして、20〜30代の男女3人を医薬品医療機器等法(薬機法)違反の疑いで書類送検しました。
容疑の内容は、マンジャロをSNSで転売するために保管した、あるいは許可なく保管・販売した、というものです。背景にあるのは、糖尿病治療薬がダイエット目的で広く使われるようになっているという、近年の状況です。
報道では、ダイエット目的の利用者がSNSなどで不正な取引に関わるケースが横行しており、取り締まりや規制が急速に強化されていることが指摘されています。今回の事件は、その流れのなかで起きた、決して他人事ではない出来事です。

なぜ違法なのか——売る側・買う側それぞれの法的リスク
マンジャロは、医師の処方箋がなければ受け取れない「処方箋医薬品」です。これを許可なく販売・授与する行為は、薬機法に明確に違反します。
報道された事件のように、必要な許可を得ずに医薬品の販売を行った場合、薬機法に基づき、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。
ここで重要なのは、実際に売れたかどうかにかかわらず、転売する目的で無許可に保管・所持している段階で、すでに捜査や書類送検の対象になりうるという点です。「まだ売っていないから大丈夫」という認識は通用しません。
そして、買う側も無関係ではいられません。非正規のルートで処方箋医薬品を入手する行為は、自らの健康被害のリスクを引き受けることになり、後述する救済制度の対象からも外れてしまいます。安く手に入るという理由だけで手を出すには、あまりにも代償が大きいのです。
行政による監視も強化されている
こうした不正な取引に対し、行政の監視は急速に強まっています。
報道によれば、東京都の薬務課は公式のSNSアカウントを通じて、医薬品の不正な転売や購入を誘う投稿に対し、「医薬品を許可等なく販売することは薬機法に違反します。直ちに販売を中止してください」といった内容の警告を直接送る対応を続けています。
かつては見過ごされがちだったSNS上のやり取りが、いまやリアルタイムで監視され、警告や削除要請の対象となっているのです。「個人間のことだから気づかれない」という時代では、もはやありません。
非正規ルートでの入手が「危険」な3つの理由
法的なリスクに加えて、非正規ルートで入手した薬には、命に関わりかねない健康上の危険がともないます。
第一に、品質と温度管理の問題です。マンジャロは、2〜8℃での冷所保存が定められた、厳密な温度管理を必要とする注射薬です。凍結させた場合は使用できず、室温で保管する場合も30℃を超えない場所で21日以内に使い切ることとされています。個人間の転売や非正規の輸送ルートを経たものは、こうした条件が守られている保証がなく、成分が変質している危険があります。
第二に、副作用と救済制度の問題です。マンジャロには、悪心・嘔吐・下痢・便秘・食欲減退といった消化器の副作用に加え、低血糖、さらにまれに急性膵炎やイレウス(腸閉塞)といった重大な副作用も報告されています。嘔吐をともなう持続的な激しい腹痛などは、急性膵炎の初期症状である可能性があり、本来は直ちに使用を中止して医師の診断を受けるべきものです。医師の管理から外れた使用では、こうした危険な兆候を見逃しかねません。さらに、正規でないルートで入手した薬で健康被害が生じても、国の「医薬品副作用被害救済制度」の対象にはなりません。万一のとき、誰も守ってくれないのです。
第三に、偽造品が混入するリスクです。非正規の取引では、中身が本物である保証がどこにもありません。まったく別の物質や偽造品にすり替えられている事例も報告されており、何を体に入れているのか分からないという、極めて危険な状況に陥ります。

そもそもマンジャロとは——正確に理解する
マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は、2型糖尿病の治療薬として承認されている、持続性のGIP/GLP-1受容体作動薬です。血糖値を下げる働きがありますが、悪心・嘔吐・下痢・食欲減退などの副作用もあります。
医療機関では、いきなり高用量を使うことはありません。添付文書でも、週1回2.5mgというごく少量から開始し、4週間ごとに様子を見ながら慎重に増量していくことが定められています。これは、副作用をできるだけ抑えながら、その人に合った用量を見極めるためです。また、1型糖尿病の方や特定の状態にある方には使用できない(禁忌)など、医師でなければ判断できない条件も数多くあります。自己判断での使用が、いかに危ういかが分かります。
加えて厚生労働省は、マンジャロについて「2型糖尿病治療以外で使用された場合の安全性については確認されていない」として、強い注意を促しています。つまり、ダイエット目的での使用は、本来の承認された用途ではないという前提を、まず正しく理解しておく必要があります。
そのうえで、ダイエット目的での利用を医師が判断する場合には、自由診療として、医師の管理・指導のもとで慎重に行われるのが本来のかたちです。GLP-1やGIPに関わる薬がどのように体に働くのかについては、別の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

安全な選択のために
ダイエットのために何かを始めたいという気持ちそのものは、否定されるべきものではありません。問題は、その手段です。
もしGLP-1受容体作動薬のような薬の利用を検討するのであれば、SNS上の転売品には、絶対に手を出さないでください。安さの裏には、法的なリスク、健康被害のリスク、そして万一のときに誰にも守ってもらえないという現実が隠れています。

正しい入口は、ただ一つです。痩身目的でのGLP-1処方については、自由診療を行っている適切な医療機関を受診し、医師の診察と管理のもとで、正規に処方を受けること。費用や仕組みに不明な点があれば、遠慮なく医療機関に尋ねてください。きちんとした医療機関であれば、費用やリスクについて、事前に明確に説明してくれるはずです。

TODOKU CLINICでも、医師がカウンセリングを通じて一人ひとりの状態を確認し、適切と判断した場合にのみ、自由診療として処方を行っています。不安なまま非正規のルートに頼るのではなく、まずは正しい知識を持った医師に相談することから始めていただければと思います。
▶ あわせて読みたい:食欲をコントロールするGLP-1/GIPという考え方
※本記事は、医薬品の不正取引に関する注意喚起・啓発を目的としたものです。マンジャロは2型糖尿病の治療薬であり、ダイエット目的での使用における安全性は確認されていません。当院の医療痩身は自由診療です。処方の可否は医師の診察により判断し、費用・リスク・副作用についてはカウンセリングにて詳しくご説明します。

【医療広告ガイドラインに基づく記載】
当院で肥満治療目的として処方する「リベルサス(セマグルチド)」「マンジャロ(チルゼパチド)」は、国内において2型糖尿病の治療薬としては厚生労働省に承認されていますが、肥満治療目的(ダイエット目的)での処方は、薬機法上の承認を得ていない「適応外使用(自由診療)」となります。
当院の医師の判断のもと、国内の医薬品卸売業者より正規のルートで仕入れています。
国内で肥満症治療薬として承認されている同成分の医薬品として「ウゴービ」がありますが、当院における自由診療での処方とは適応条件(BMIの基準や基礎疾患の有無など)や使用目的が異なります。
GLP-1/GIP受容体作動薬の成分(セマグルチド等)は、FDA(米国食品医薬品局)等において肥満治療薬として承認されているものがありますが、使用にあたっては低血糖、胃腸障害(吐き気、便秘、下痢)、まれに急性膵炎などの副作用リスクが報告されています。当院では医師が患者様の状態を診察した上で、リスクを適切に管理しながら処方を行います。

